M子
どうも、当ブログの短歌監修をしております文士Mです。今週も短歌四コマのお時間がやってきました。えー今回の短歌のテーマは「糖分補給の選択肢」ということですが。なんと、今回の短歌を作ったのは私ではありません。
M子
というわけで、今回の短歌を作ったのは~。
K林教授
私です。教授です。
T中
同じく私もです。二人で合作です。今回の短歌はこちらです。
甘いもの
どちらで補給
するべきか
素敵スイーツか
M子
えー、では詳しい解説をお伺いする前に、私の方から一つこの短歌に対して指摘と言うか、疑問を尋ねてもよろしいでしょうか。
K林教授
何ですかね? 我々は完璧な歌を詠みましたよ。
T中
そうです。この三十一文字の中に間違いは一文字としてありません。
M子
では自信満々なお二人と、そしてお酒を嗜まれる全ての人々に向けて問います。
K林教授
何でも答えましょう。
T中
そんなに疑問になることありましたかね?
M子
缶チューハイって甘いもの枠なんでしょうか? 缶チューハイとスイーツって共に「甘いものグループ」として同列に語ってもいいんでしょうか?
K林教授
缶チューハイは甘いもの枠でしょうがああああああああ!!
T中
そうですよおおおおおおおお!! 我々は毎日スイーツか缶チューハイかで悩んでるんですよおおおおおお!!
M子
ひぃぃぃ。みんな助けてくれぇ、酒飲み二人の圧が強くて、まともな議論が出来そうにないよぉ。絶対にスイーツと缶チューハイは同じ「甘いもの」としては語れないはずだよぉ。甘さが違うんだよぉ。
K林教授
私とT中君がM子君を華麗に論破するところが見たい人は「続きを読む」をクリック。
T中
はい議論開始ィ! お題はスイーツと缶チューハイは同じ甘いものグループなのかどうかァ!
K林教授
まず我々の主張を明確にさせていただきます! それはスイーツも缶チューハイも共に「甘いもの」だということです! 故に今回の短歌四コマのように、仕事終わりの糖分補給の選択肢として、スイーツか缶チューハイかで悩むのは全くおかしなことではないということです!
T中
そうだぁ! その通りだぁ!
K林教授
そしてその根拠は次の通りです! 我々人間は通常、スイーツを食べると甘いもの食べたい欲は満たされ、缶チューハイは飲みたくなくなります! 逆に!! 缶チューハイを飲めば、それはそれで甘いもの欲は満たされ、もうスイーツは食べようとは思いません!
T中
いいぞ教授! いけえ!
K林教授
この事実からスイーツと缶チューハイは共に糖分として、つまり体が欲する「甘いもの」として、両者は同じ甘いものグループに分類されるべきなのです!
T中
その通り! よ! 日本一教授!
K林教授
よってまた、我々の作ったこの短歌はまったき正当であり! 文士M子先生、貴方に批判される謂れはありません!
T中
いけええ! 論破論破論破ぁ!
M子
(……何故かディベートが始まってしまったー。しかも完全なガヤと化したT中君が向こうチームにつき2対1の構図。更に相手は酒飲み組で、私は全くお酒は飲まない。これは不利だ、負け戦だ)
M子
(しかし私は誇り高き文士! 文章上では如何なる状況でも諦めてはならない! ここは華麗な論破を披露するのだ!)
M子
えー、ではK林教授にお尋ねします。まず確認しますが、貴方の主張というのは、スイーツと缶チューハイは共に仕事終わりの疲れた身体が欲しがるような「甘いもの」である。根拠は缶チューハイを飲めばスイーツは食べたくなくなり、スイーツを食べれば缶チューハイは飲みたくなくなるから、ということでよろしいですか。
K林教授
そうである。
T中
間違いなーい。
M子
では、「缶チューハイを飲めばスイーツは食べたくなくなる、またスイーツを食べれば缶チューハイは飲みたくなくなる」という現象について私の意見を述べさせてください。
K林教授
はい。どうぞー。
T中
どうぞー。いらっしゃいあせー。
M子
そうですね。じゃあ例えば友達と一緒に居酒屋に入った時を想像してください。まず席についたら一番に、各々好きなアルコール飲料を注文して乾杯しますよね。
K林教授
うむ。居酒屋はまず乾杯だな。
T中
うぃー。かんぱーい。
M子
で、乾杯をした後、ショートケーキを注文する人はいますか。
K林教授
……まあ普通は頼まないと思うけど。
T中
そんな人いね。唐揚げだ唐揚げ。
M子
何故ショートケーキを頼まないのですか? お酒のつまみにショートケーキを食べればいいじゃないですか。
K林教授
ば、バカを言えい! ショートケーキで酒が飲めるか!
T中
唐揚げ注文しまーす。レモン勝手にかけまーす。
M子
でしょう? ショートケーキでお酒は飲めない。つまり、スイーツとアルコールは食べ合わせが悪いのです。一般にアルコール飲料にあう食べ物は、唐揚げなど塩気が効いたものであって、甘いものはお呼びじゃありません。
K林教授
ぐっ。その通りだが。
T中
当たり前だぞー。酒にスイーツは合わんぞー。
M子
さあもうガヤのT中君が答えを言っているのですが、コンビニでよく売っている缶チューハイもまた、いくら果汁フレーバーが強くジュースのような甘みがあるとはいえ、成分的には当然アルコールが含まれているわけです。よって、缶チューハイとスイーツは食べ合わせが悪いと言えます。
M子
以上のことから、「缶チューハイを飲めばスイーツは食べたくなくなる、またスイーツを食べれば缶チューハイは飲みたくなくなる」という現象は、単にアルコール飲料とスイーツの食べ合わせが悪いから発生するものだと私は主張します。教授の主張するように、両者が共に「甘いもの」で甘いもの食べたい欲が満たされるから発生するわけじゃありません。
K林教授
ぐっは! 正論じみたことを言いおってぇ!
T中
どーゆーことだー? 教授が論破されちゃうのかぁ!?
K林教授
まだだ! まだ私には反論があるぞ!
M子
はいはい、いくらでも聞きますとも。
K林教授
確かに、缶チューハイはアルコールだからスイーツとの食べ合わせが悪いという側面もあるでしょう! しかし! 一般的な味覚からして、缶チューハイは「甘いもの」であるという事実に変わりありません! その点はお認めいただけますよね!?
M子
はい。何度か口にしたことがありますが、缶チューハイの中にはジュースのように甘いものもあると思います。
K林教授
だったら話は簡単です! 缶チューハイとは「アルコール」でありかつ「甘いもの」でもあるのです! よって、やはり缶チューハイとスイーツは同じ甘いものグループに分類されるべきなのです! どうじゃあああああああああい!
T中
いけええええい教授! 再び論破論破論破ァ!
M子
はい。確かに教授の言うように、一般的な味覚からして缶チューハイは「甘いもの」とはいえるでしょう。しかし、仕事終わりの疲れた身体が求めるスイーツのような「甘いもの」と言えるかどうかは議論の余地があります。
K林教授
な、なぁにぃ?
T中
がんばれーきょーじゅー。
M子
では想像してください。高級ホテルで修業を積んだ一流のパティシエさんを。そのパティシエさんがオープンした人気のケーキ屋さんを。
K林教授
い、いきなり始まったな。
T中
将来の夢はケーキ屋さんでした。
M子
滑らかなホイップクリーム、ふわふわのスポンジ生地。そして宝石のように艶のあうる深紅色のイチゴ。全人類の好物、THEショートケーキがガラスケースの中でキラキラと輝いています。
K林教授
じゅるり。美味しそうだなー。
T中
ああん。ケーキ食べたいー。
M子
なんだか甘いものが食べたくなってきましたね。
K林教授
間違いありません。ケーキ食べたいです。
T中
チーズケーキの方がスキー。
M子
じゃあ、そんな美味しいスイーツを想像中の貴方に甘い缶チューハイあげます! ささ、飲んで飲んで! 缶チューハイでその欲を解消してください!
K林教授
できるかぁい!
T中
一流パティシエの作るショートケーキが食べたいんじゃぁ!
M子
さて、もうお解りでしょうが真実はこの通りです。確かに缶チューハイは甘いのでしょうが、しかし甘さにも種類があり、おそらく缶チューハイの甘さというのは単に舌が糖分を感じ取るという意味の「単純な味覚としての甘さ」なのです。
M子
一方、スイーツの甘さというのは、単に味覚が糖分を感じるだけでなく、やわらかい口触りや、ホイップ的な食感、可愛らしい見た目など「総合的に見て疲れた心身を癒す力を持つ甘さ」のことを言います。故にスイーツのような甘いものが食べたいという欲求を、缶チューハイによって代替することはできません。両者は甘さの種類が違うのです。
K林教授
ぐっ! またか、また論破されてしまうのか!
T中
いっけーい! 文士M子せんせーい!
M子
さて、更なる完全論破を披露するために私はもう一歩議論を深めたいと思います。私が言及したいのは、果たして現代社会の人間が仕事終わりに求める「甘いもの」というのは、「単純な味覚としての甘さ」なのか「総合的に見て疲れた心身を癒す力を持つ甘さ」どちらのことを言うのか、という議題です。
M子
医学的な見地からは疲れた脳を回復させるには単に糖分を摂取すればいいだけなので、「単純な味覚としての甘さ」であるという答えが返ってくるのかもしれませんが、現実社会に生きる人間の心理はそうではないと答えています。
M子
なぜなら、我々の大多数は普段いくら仕事で疲れても、砂糖の塊を直接口に含もうとは思わないからです。(中にはコーヒー用の角砂糖を直接口に含むのが好きだと言うひともいるかもしれませんが、多数派ではないと思います)
M子
この事実から、やはり現代社会の人間が仕事終わりの疲れた脳で求める「甘いもの」というのは「単純な味覚としての甘さ」を持つものではなく、「総合的に見て疲れた心身を癒す力を持つ甘さ」を持つものだと言えるでしょう。
M子
ということは、当記事の四コマ漫画のように仕事終わりに「甘いものが食べたーい」となって、スイーツと缶チューハイで悩む、というのは根本的に間違っているということです。何故ならば、我々が仕事終わりに求めるのはスイーツのような「総合的に見て疲れた心身を癒す力を持つ甘さ」であり、缶チューハイは単に味覚的に甘いだけで、その要件を満たしていないからです。缶チューハイは仕事終わりに求める「甘いもの」としては、お門違いということですね。
M子
よって、わたくし文士M子は、仕事終わりの糖分補給の選択肢として、スイーツか缶チューハイかで悩むのは間違っていると主張します。QED.証明終了です。何か異論反論はありますかな?
K林教授
ええいぬけぬけとぉ! 如何にも自分が正しいかのように語りおってぇ!
T中
このままだと負けゆー、教授がんばえー。
M子
はっはっは。T中君、寝返って私の味方になりたまえ。君の師匠はこの私だ。
K林教授
まだだ! 私には最大の反論があるぞ!
T中
きょーゆがんばえー、まけるなー
M子
聞きましょう。どんなことでも華麗に論破してあげますよ。
K林教授
文士M子先生、やれ貴方の主張を聞いていれば甘さの種類が違うだとか、現代社会の人間が求める甘さとはなんだとか、概念上の言葉を使って議論を難しく見せていますが!
T中
そうだそうだー、むずかしいぞー。
K林教授
我々が仕事帰りのコンビニで、スイーツにするか缶チューハイにするかで悩んでいるというのは、実際に起きている現象であります! 貴方のような概念上の架空の話ではなく、我々は実際にスイーツと缶チューハイの前に立ち、どちらにするかという問題にいつも頭を悩ませているのです!
K林教授
そして貴方の言うように、スイーツと缶チューハイを同じ甘いものグループで括るのがお門違いだと言うのであれば、一体何故我々はコンビニで悩んでいるというのですか! 実際に我々はコンビニでスイーツか缶チューハイかで悩んでいるんです! 我々の悩みはこの四コマ短歌を作るためにでっちあげられた嘘っぱちだとでも言うのですか!
T中
そうだそうだ! こっちはじっさいもんらいだ! かくうのもんらいではなーい!
K林教授
答えてくださいM子先生! もしも貴方の口から納得ができる答えが返ってこないとすれば、私は当初の主張通り、やはり缶チューハイはスイーツと同じ「甘いもの」であったと主張します! どちらも「甘いもの」である故に、どちらで糖分を補給するか悩んでいるというだけの話であったと主張します! そして、我々が作ったこの短歌にも全く間違いはないと主張します!
M子
くっくく。ははははは。
K林教授
な、なんじゃい。余裕ぶりおって!
T中
きょーゆを笑うんじゃなーい!
M子
ええ解りましたよ! そんなに言うのであれば、貴方方に真実を教えてあげますよ!
K林教授
真実だと~?
T中
なにをー! 言うてみい!
M子
貴方方は初めから自分達のことを偽って見せていました。さも自分達は「仕事終わりはスイーツで回復~」というような可愛らしい女子であるかのように振舞い、四コマ漫画でも可愛らしいT中君がスイーツを見てニコニコする絵を描いて、自分達がスイーツ大好き女子であるかのように見せかけてきました。
M子
しかし! 本当の貴方方はスイーツ系女子なんかではなく! 貴方方の真実の姿は――!
K林教授
真実の姿は?
T中
しんじつのすがたは?
M子
――本当はただの酒飲み野郎なんだ! 貴方方はコンビニで糖分補給の選択肢で悩んでいるのではなく、「甘いもの」か「甘いアルコール」かの二択で悩んでいただけなんだ!!
K林教授
なっ!?
T中
がびー。
M子
しかも本当はお酒が飲みたい一心で始めからお酒を買うと決まっているのに、そんな酒飲み野郎な自分を美化するために、あえて一旦スイーツ好きを演じ、さも「甘いもの」の選択肢で悩んでいるかのように見せかける! 本当はただ酒が飲みたいだけなのに、「仕事で疲れたからスイーツで回復~」という真っ赤な嘘を吐き自分達を可愛く見せかける!
K林教授
そんな、そんなことは……!
T中
ががががー。
M子
貴方方の正体はそういうセコイことを考える、ただの酒飲み野郎なんだあああああああああ!
K林教授
ぎゃあああああああ!! ばーれーたーかーーーーー!!
T中
たーしーかーにー。やーらーれーたー。
―――
――
―
M子
……QED終了。ふぅ、学生時代にソクラテスを読んでいて助かったな。意味深な態度や学問っぽい言葉使いで議論を深く見せつつ、最後にズバッと真理っぽい言葉を突きつける。ソクラテス伝統の手法だ。現代のディベートと言えばひろゆき氏が有名だが、読み物としてはソクラテスもいいぞお。文章化した時の憎らしさや可愛げのなさにおいて、ソクラテスの右に出る者はいないだろう。
M子
ここで文士M子、一首詠みます。
酒飲みの
友と議論で
戯れる
我はソクラテス
友は斬られ役
M子
うーん。いい歌だ。これならソクラテスの前でも自信を持って詠めるなぁ。ソクラテスという言葉を下の句にそのままぶち込んでいる所が、いかにもインテリ気取りでいい感じの歌である。
T中
しかしM子先輩。貴方の論には致命的な間違いがあります。
M子
うわ、びっくりした。いきなりなんだね。
T中
貴方の論には致命的な間違いがあると言っているのです。それを指摘してあげましょう。
M子
なに? 私の論に矛盾があったのかね。それは是非指摘してもらいたいね。
T中
M子先輩。貴方は今完全にシラフの状態ですよね?
M子
む。まあそうだが。何も飲んでいないぞ。というより私はお酒を飲めないしな。
T中
でしょう? それに対して我々は――。
K林教授
うぃー。
M子
ん? 我々は何?
T中
実は初めっから完全に飲んでいるのです! M子先輩が論破していたのはただの泥酔教授だったのです!
K林教授
うぃー! ソクラテスうぃー!
T中
やっぱりか! この酒飲み共がぁ! この現代のソクラテスたる文士M子に対し飲酒しながら議論を挑むとは! 何たる無礼をおおおおおおおおお!!
T中
ビールを回せぇい!
K林教授
底までのもぉぉぉう!
M子
ブログ記事で歌うんじゃありませーーん! ていうか! それだけ語っておいてチューハイじゃなくてビール飲んでるんかーい!
おしまい
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